Packing & Fitting
パッキングとフィッティング
スタッフバッグの落とし穴
寝袋やダウンジャケット、レインウェアなどを購入すると決まってついてくる専用のスタッフバッグ。一見とてもありがたい収納袋ですが、実はこれに大きな落とし穴があります。購入した道具やウェアが、実際のハイキングで収納されるのはどこでしょうか?細かく仕切れるタンスの引き出しや、ゆったりとハンガーに掛けられるクローゼットではありません。そう、それはあなたのバックパックなのです。そして、そのありがたくついてきた専用のスタッフバッグは、その商品をよりコンパクトに収納するために、きっちりとピッタリサイズに作られていることがほとんどです。確かに個々の物は小さくなりますが、いざバックパックにパッキングを始めると収納のあそび(形を変える余裕)がないので、まるでバックパックの中で細かなパズルをするようになってしまい、その結果、内部にデッドスペースが生まれやすくなってしまいます。
下山時に食料などが減って荷物が少なくなっているのにもかかわらず、バックパックの大きさが来るときと変わっていない、外から見るとぼこぼこしているという経験はないでしょうか?これは出発前の時間と場所に余裕がある時にパッキングしたパズルがハイキングを終えるまでに崩れてしまい、隙間(デッドスペース)が増えてしまっているという証拠です。ハイク中では天候や時間に左右され、ゆっくりパッキングする余裕がないことがあります。また、パッキングに都合のいい平坦なスペースがあることも、山小屋やテーブルなどが設置されている休憩ポイントを除けばなかなか見つけられないことも多いでしょう。実際にレインジャケットなどをテーブルなど何もない状況で綺麗に畳んで専用のスタッフバッグに収納するのは、慣れていないとなかなか難しいものがあります。そうしてキレイに収納できなかったり、思い通りにパズルがうまくいかなかったりなどの積み重ねが、バックパックの大きさが変わらない、外から見るとぼこぼこしている要因と言えます。
デッドスペースは文字通り、バックパックの中で必要以上の容積を奪ってしまいます。また、全体のバランスも崩してしまうため、背負い心地や見た目も悪くなってしまいます。パズルをする度にパッキングに時間がかかってしまうので、奥にしまったものを取り出すのが面倒になってしまい、天候の変化に対応が遅れたり、ピンポイントで現れる難所を無理して通過しようとして思わぬ事故や怪我につながるケースもあります。
パッキングは本来、用途に関連づけて道具をまとめておくことが肝心です。雨具を例にとってみると、レインパンツは本格的に雨が降ってきてからはじめて着用することが多いですが、レインジャケットは防風性が高く、防寒にも役立つので雨天以外の使用頻度も高くなります。比較的、取り出しやすいところに手袋やネックゲイターなどの防寒小物とまとめて収納しておくと便利です。また、ダウンパンツや着替えなどは、停滞、停泊する時にはじめて取り出すことが多く、極力濡らしてはいけないものなので、寝袋などと一緒に防水性が高い袋に入れておくのが理想です。そして、もうひとつのポイントは「スタッフバッグをぎちぎち一杯にしない」という点です。コンプレッション(圧縮)すると個々のものがちいさくなるので、ちょっとうれしいですが、固いもの同士が並ぶと、ほぼ必ず、角や辺の部分にデッドスペースが生まれてしまいます。省スペースにする目的だったはずだったのに、これでは本末転倒です。そこでスタッフバッグを70〜80%の容量で使ってみましょう。すると、スタッフバッグは隣り合ったもののかたちに合わせて変形し、お互いのデッドスペースを埋めてくれます。いい意味で「適当」にすることで、ものが増えたり、入れ替えたりする際にも余裕があり、また、形が変わるピースでパズルをするかのように、パッキングそのものもスムーズになります。
バックパック内のデッドスペースをなくし、必要なものが取り出しやすい。簡単そうに聞こえますが、これには熟練が必要です。 ギア専用のスタッフバッグというのはその名のとおり、それだけを綺麗に収納することはできますが、実際のフィールドでは様々な状況をつなげて考える必要があり、収納もそれに合わせて「柔軟」にしておくことが、よりスムーズにストレスなく行動することに繋がります。そうすることで時間と気持ちに余裕ができ、結果、ハイキングをより安全に快適に楽しむことができるのです。
・デッドスペースを減らすパッキング(Round Stuff)→ ■
・フィッテイングの合わせ方(OWN)→ ■
・フィッテイングの合わせ方(Goraon)→ ■